中国ムウス砂地の砂漠化地図作成の基礎研究として、1.衛星画像による裸地化地域と植被化地域の検出、2.GISをもちいた裸地化・植被化要因の分析、3.現地調査による裸地化・植被化の実態とその機構の解析、を行った。 衛星画像とGISによる分析の結果、各村における裸地化面積は砂丘面積と有意な相関があり、裸地化は砂丘活動と関連があった。一方、植被化は農地面積と関連が強く、農地とその周囲の植林の拡大が植被化に寄与していた。裸地化は家畜数と関係があり、牧畜強度と関連があった。 現地調査の結果、裸地化の進行が激しいところでは、いずれも家畜頭数とりわけ山羊の頭数が多く、山羊の過放牧が現在進行中の砂漠化の主要因と考えられた。いっぽう調査対象農家の現金収入は、裸地化が見られる地域で高く、安定域で低い傾向があった。山羊はカシミヤの原料になるため、高い現金収入を得ることができる。市場経済の浸透が山羊頭数の増加を促し、それが砂漠化の原因になっていると推察される。 いっぽう共同体による土地利用規制がある農耕村や山羊飼育を禁止している村政府の管轄域では、裸地化は進行していなかった。また土地荒廃を恐れて、自覚的に山羊を飼っていない牧民もおり、その所有地内の植生は安定していた。これらのことは、適切な施策の展開が、砂漠化の抑制に効果的なことを示している。
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