1.ストサイトとした中国ムウス砂地について、現状の砂膜化問題を考える前提になる自然的条件と歴史性を文献及び現地調査資料からまとめた。 2.中国ムウス砂地を対象にして、20年間の衛星画像の変化から砂漠化状況と緑化状況を把握した。これに各種主題図や政府統計データを加え、GISを作成した。さらに現地に赴き、予め抽出した砂膜化地域や植生が安定した地域にGPSを用いて接近し、植生・土壊の調査とともに、住民のインタビューを行った。これらにより総合的に砂漠化要因の分析を行った。その結果、現在の砂漠化の主要因は過放牧であることが明らかになった。家畜密度が草地面積1haあたり2頭以上で砂漠化が起きやすかった。さらに山羊の頭数比率が高いと必ず激しい砂漢化を招いていた。逆に農耕村周辺では緑化が促進されていた。また、現地政府の家畜頭数統計は山羊を中心に過少に報告されており、研究に用いるには注意が必要である。 3.同位体を用いて、植生の水資源利用を分析し、持続的な水資源利用のための計画的な緑化方法について検討した。その結果、オルドスヨモギやコルシンスキムレスズメやペキンヤナギの水利用効率は同等だったが、当地の砂丘植生の極相種の一つといわれるサビナビャクシンは水利用効率がよかった。よって今後は、そのような水利用効率のよい植物を緑化に用いることによって、地下水資源の消耗を抑制できると考えられる。また水利用効率は同等の潅木のオルドスヨモギやコルシンスキムレスズメに比べて、樹木であるペキンヤナギでは根系がより発達しているために、地下水位が低い場合の水損失量が大きいとしている。よって根系発達の小さな潅木の方が、水資源保全機能が高いと言える。 4.以上の研究成果を総括し、半乾燥地の緑化のあり方について、要点と今後の課題についてまとめた。
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