事例対象地の現況調査については、まず、実施計画通り、「原始の森」復元試験地内大面積固定試験地を一部拡張し、毎木調査した。拡張面積は20m×20m区画5区画で、その結果、ヒノキの多い「へ」小班側、広葉樹二次林化が進む「る」小班側がそれぞれ約2haとなり、またそれぞれに100m×100mの比較試験地が設けられた。それを使って種数と面積(100〜20000m^2)の関係を分析した結果、「る」小班側の種数が、現時点では豊かであっても、まわりをヒノキ林により取り囲まれ、孤立状態となっているため、すでに頭打ち状態を示していることなどが明らかとなった。試験地全体を対象にした調査としては、フサザクラが更新していた自然性の高い沢沿いに26m×32mの新規プロットを設定し、稚幼樹も含めた毎木調査を実施した。また、稚幼樹調査については、20m×20m区画11区画を選定し、調査した。以上の調査から、試験地周辺を種多様性の高い森林として維持していくためには、ヒノキの間伐など、何らかの手入れが不可欠となるが、樹種の多様性を超えた自然性の豊かな森林に誘導していくためには、手を付けず保存して行く観点も重要となることなどが示唆された。温帯系樹種見本林の毎木調査については、全個体の直径の測定を終了した。また、「生産の森」の標準地調査についても、既存の標準地3箇所と新規標準地2箇所の毎木調査を行った。分枝パターンや樹形などの解析については、13種19個体で実施した。その結果、森林景観を、競合・定着的なものと非競合・非定着的なものが織りなす空間として理解する基礎理論の妥当性がより一層高いものであることが示唆された。森林景観に出入りする動物相の観測・分析については、既設のシステムによる観測は継続して行ったものの、前年度購入のシステムについては、機械の調整・予備観測を試みるに留まった。
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