研究概要 |
近年,岩盤内部の地下水が降雨流出に大きく寄与していることが明らかとなってきている。特に,中古生層山地において,この傾向は顕著であるという指摘はあるが,中古生層においては,砂岩・頁岩やチャートといった個別の基盤岩の流出特性を明らかにした研究はなく,防災上問題があると考えられる。そこで,本研究では,足尾山地東部における中古生層山地における降雨流出特性を解明する子を目的とした。この地域は中古生層足尾帯に属し,主に砂岩とチャートが見られる.試験流域の地質条件として砂岩とチャートの2種類を設定し,それぞれ流域面積10ha程度の大流域,1ha程度の小流域を設置し流出解析を行った.流量の測定は,パーシャルフリュームや三角堰を用いて行い,データロガーにより連続観測を継続的に行った.パーシャルフリューム付近に雨量計を設置し,降雨量の観測も同時に行った.さらに電気伝導度計を設置し,渓流水質の変化についても観測を行った.砂岩の小流域のハイドログラフでは,降雨強度のピークに対応して流量が増加し,降雨終了直後に流出の1次ピークを形成した.さらに,降雨から6-24時間後に小さな2次ピークを形成し,2次ピーク後の流量の減衰はチャートに比べてかなりゆるやかだった.また降雨後には電気伝導度が大きく増加した.一方チャートの小流域では,高い流出ピークが見られた。それと同時に,大きさは左岸よりも小さいものの,遅れた2次ピークが見られた。以上の結果から,砂岩流域・チャート流域とも,降雨流出に基盤岩地下水が大きく影響を与えていることが推測される。
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