本研究では、海岸砂防林管理の一つの方向として、マツクイムシ被害を受けた砂地クロマツ林への在来広葉樹導入の可能性を検討するため、マツクイムシ被害跡地への広葉樹の侵入状況や在来広葉樹の砂地への導入、広葉樹の埋砂耐性等に関する研究を行った。 1.海岸砂地におけるマツクイムシ被害林分の植生調査:鳥取県内のマツクイムシ被害を受けた海岸クロマツ林計36ヶ所の植生調査を行い、マツクイムシ被害後の林分遷移の現状と将来的な遷移の方向を検討した。クロボク土壌に成立した林分では常緑樹の侵入が目立ったのに対し、砂地上のクロマツ林では常緑樹の侵入は少なく、落葉樹の侵入が多く認められた。 2.海岸砂地クロマツ林への広葉樹の導入調査:常緑樹が砂地クロマツ林で生育する条件を調べるために、砂地クロマツ林とそれを取りまくいくつかの環境条件下にスダジイとタブノキ植栽し、活着の程度や成長の種間差を調べた。その結果、裸地砂丘上や、松枯れで生じた林冠ギャップ内でのスダジイやタブノキの生育は困難であったのに対し、クロマツの林冠下ではスダジイやタブノキの活着は可能であった。またスダジイに比べタブノキの方が活着はよかった。タブノキはスダジイに比べ蒸散を抑え、水分を有効に利用していることが、砂地上での生存を支えているものと考えられた。 3.樹木苗木の埋砂耐性に関する調査:スダジイ、タブノキ、クロマツの苗木を対象とし、実験的に埋砂処理を行い、苗木の生存に与える影響について検討を行った。その結果クロマツが最も埋砂に強く、以下タブノキ、スダジイの順であった。
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