研究概要 |
本研究計画では、マングローブ林根圏生態系の現存量、未分解植物遺体、有機炭素を炭素の蓄積として評価し直し、マングローブ林生態系の地球環境にはたす重要性を再評価することを目的とした。研究対象としたのは、巨大な根の現存量を持つ南タイ、アジア・太平洋地域のマングローブ分布の中心である東インドネシア、および北ベトナムのマングローブ林である。各調査地から採取した、深さ1mまでの土壌サンプルについて、C/Nアナライザーにより炭素含有量を測定し、林分の炭素蓄積量を推定した。結果として、マングローブ林の土壌、特にRhizophora属が分布するマングローブ林には巨大量の炭素蓄積があることが明らかとなった。南タイのRanongとNakorn Sri Thamaratのマングローブ林根圏には97-1,185.1tonC/haの炭素蓄積があった。一方、東インドネシアのCilacapとGilimanukでは75.9-1,563.2tonC/haであった。北ベトナムの6年生Kandelia candel人工林では根圏炭素蓄積が79.9 ton C/haであった。これらの値は陸上の森林生態系と比較してかなり大きな値であった。根圏の炭素蓄積に影響を与える要因としては(1)根の現存量、(2)潮汐頻度、(3)林齢があげられ、根の現存量が多いほど、滞水頻度が高いほど、また林齢が大きいほど炭素蓄積量は大きくなった。以上の結果よりマングローブ生態系には多量の炭素が蓄積されており、陸上の生態系と比較して面積は少ないが、天然のCarbon Sinkとして地球レベルの炭素循環に重要な役割を果たしていると結論された。
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