研究概要 |
本研究は、山地域(特に、中山間地域)における近年の土砂生産・流出状況の実態を把握し、これらの地域の土砂生産能力やその変化をもたらした影響因子を現地実態把握調査,空中写真判読,人工降雨実験,数値実験等を実施することにより明らかにしようとするものである。 本年度は,平成11年度に実施した研究成果を踏まえ、紀伊半島中部に位置する宮川ダム流域内での崩壊発生頻度と降雨分布特性の関係について考察を加えた。そして、ここで得られた崩壊地の出現状況資料を基に、林業の衰退に伴う森林整備すなわち森林施業状態の変化が表層崩壊の発生に及ぼす影響を定量的に把握した。自然林により構成される斜面と伐採跡地内の斜面とを比較すると、崩壊発生限界降雨量は前者の方が大きく、同一規模の降雨が作用した場合の崩壊面積率は後者の方が大きくなるといった事実が確認された。以上の結果を勘案し、森林の施行状態変化が流域内での崩壊発生ポテンシャルに及ぼす指標として「崩壊発生可能面積率:APr」を新たに定義した。さらに、上記研究成果を基に、表層崩壊の発生誘因として位置付けられる「降雨」と、自然・社会環境変化を表す指標として位置付けられる森林施行状態変化を考慮した「崩壊発生可能面積率:APr」を説明変数として抽出し、表層崩壊発生予測式を構築した。 次年度以降の研究では、今年度の調査により得られた研究成果を踏まえ、中山間地域における自然環境や社会環境の変動予測を行うとともに、この環境変化に伴った土砂災害形態や規模の将来予測を行うことにより、21世紀に向けて治山・砂防計画や対策を展開していく上での方向性を明らかにすることを目的とする。
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