研究課題/領域番号 |
11660155
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
吉本 敦 統計数理研究所, 調査実験解析研究系, 助教授 (10264350)
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研究分担者 |
行武 潔 宮崎大学, 農学部, 教授 (30174832)
庄司 功 筑波大学, 社会工学系, 助教授 (20282329)
尾崎 統 統計数理研究所, 予測制御研究系, 教授 (00000208)
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キーワード | 森林経済学 / 森林生態学 / 森林測樹学 / 農地利用政策 / 統計学 / 種多様性 / ランドスケープ・マネジメント / 確率モデル |
研究概要 |
本研究は、深刻化する問題が集中する中山間地域における農林業の資源管理・経営特性を把握し、市場の自由化を前提とした持続的農林資源管理のあり方を時空間的な視点から探求しようとするものである。 本年度は林業経営に関わる不確実要素に対する保険金制度を中心に研究調査を行った。結果は以下の通りである。 林業経営に関する不確実要素調査: ・昨今の木材価格の低迷のみならず、台風・雪害などの自然災害が不確実な周期で発生し、林業経営に多大な損失を与えて来た。台風については、大分を始め九州地区での損害が顕著であったが、その災害規模などの時系列データについては十分な蓄積がされておらず、時系列モデルによる分析はかなり困難であることが分かった。 ・林業においては、こうした自然災害に対する保険制度が準備されているものの、その加入率については、県の条例に従った造林補助事業などに伴う抱き込み加入がほとんどで、強制的な加入期間を過ぎたものについては、森林所有者の災害に対するリスク管理意識があまりないことが、聞き取り調査により分かってきた。また、保険金支払いについては、分割と言った一般的に保険業界で行われているような支払い方法はなく、一括支払いが基本であった。そのため、林業収入の低い林家にとっては、一括支払いの保険料の重みは軽くなく、保険の経営リスクヘッジとしての効果が発揮されていないのが現実であることが分かった。 ・保険支払いについては、林業経営による収入と比較してかなり高額な値が設定されていることが分かった。従って、かつて大分などで発生した台風による被害に対する保険金支払いは林家にとって大きな収入となっていることが分かった。すなわち、災害発生に伴い、保険金が支払われ、かつ成林木については被害木であれ、市場での売買も可能である。また、被害木除去の後の植林については、造林補助を活用することができる訳である。現実には被害木除去での作業が非常に困難なため、その費用・二次災害は無視できないものであるらしい。 ・保険制度は、こうした自然災害によるリスクヘッジの上で、非常に有効なものであるが、その計量的な分析結果はなく、今後の研究内容に取り入れる必要が生じてきている。
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