研究概要 |
セルロースを炭素源とする培地で培養した白色木材腐朽菌Phanerochaete chrysosporiumからmRNAを抽出した。これを,既往の遺伝子情報に基づいて設計したプライマによるPCR法によって,セロビオース脱水素酵素(CDH)の全長をコードする遺伝子領域をcDNAとしてクローニングした。さらに,これを発現ベクターpPIC9KのEcoRIサイトに組み込み,メタノール資化性酵母Pichia pastorisに形質転換した。得られた形質転換体を培養し,メタノール存在下で組換えCDHを分泌型タンパク質として発現させた。その結果,5日間の培養で約65mg/Lという非常に高収量で完全に活性型の組換え体としてCDHが得られることが分かった。また,得られたCDHはセルラーゼ活性が全く含まれない。したがって,今後のCDH研究ならびに利用にとって,この組換え体は非常に有用であると考えられる。この研究結果については,近々公表予定である。 また,ウプサラ大学構造分子生物学科のC.Divneらのグループとの共同研究により,P.chrysosporium由来CDHの3次元結晶構造解析を進め,ほぼ全容を明らかにした。その結果,CDHを構成する2つのドメイン構造は互いに向かい合ったU字型構造をとっていることが明らかとなった。また,この間に基質の結合サイトが存在することが示唆された。さらに,CDH中のフラビンからヘムヘの電子伝達のpH依存性が,pHに基づくCDHの3次元構造変化による両補欠分子族間の距離的な問題に帰結することを示した。
|