住宅の床下環境とシロアリの食害生態に関する基礎的研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11660165
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 吉村 剛 京都大学, 木質科学研究所, 助教授 (40230809)
• キーワード: シロアリ / 床下環境 / 食害活動 / 湿度 / 温度 / 風量 / 非破壊モニタリング / アコースティック・エミッション

研究概要

前年度に行った直接的な観察から、イエシロアリの食害活動における最適な相対湿度範囲の存在が示唆されたことから、本年度はより実際の状況に即した摂食活動の追跡方法としてAE(アコースティック・エミッション)モニタリングを用い、湿度環境と木材中でのシロアリの摂食活動との関係を検討することを試みた。
実験には、イエシロアリ室内および野外コロニーがら得た職蟻および兵蟻を用い、(1)固定湿度条件下(55,65,75,85%RH)、あるいは(2)連続的湿度変化条件下(2時間毎に55-65-75-85-75-65-55%と相対湿度を変化させる)でアカマツあるいはセンゴン試験体内部で食害を行わせながら、AEモニタリングを行った。
湿度固定条件下および連続的湿度変化条件下での結果をまとめてみると、昨年度と同様、イエシロアリにとってその摂食活動に最適な相対湿度条件というものが明らかに存在していた。ここでの結果からは65.0から75.0%の間に最適条件があると考えられ、また、室内コロニーの方が野外コロニーよりも湿度変化に対してより敏感である、という結果が得られた。これには安定した温・湿度条件における室内コロニーの長期に亘る飼育というものが影響したものであると考えられる。
本研究の結果から、イエシロアリの食害活動にとって最適な湿度環境が初めて明らかになった。現在、温度、風量などその他の要因とシロアリの食害活性との関係について引き続き検討を行っており、これらの結果を総合的に考察することによって、近い将来シロアリ防除における床下環境基準の策定が可能になると考えられる。

研究成果

• [文献書誌] 簗瀬佳之,藤井義久,奥村正悟,吉村剛,今村祐嗣: "PVDFフィルムを用いたシロアリ食害検出用センサの開発-木質住宅部材の接合部に挟み込んだPVDFフィルムの適用-"材料. 49(4). 401-405 (2000)
• [文献書誌] Yoshiyuki Yanase,Motoko Shibata,Yoshihisa Fujii,Shogo Okumura,Kaoru Iwamoto,Takekoshi Nogiwa,Tsuyoshi Yoshimura and Yuji Imamura: "Feasibility of Termite Control Using Crushed Cement-Stabilized Sludge (Polynite) as a Physical Barrier and Acoustic Emission (AE) Monitoring"The Int.Res.Group on Wood Preserv.,Doc No.1RG/WP/OO-10381. (2000)
• [文献書誌] 吉村剛: "床下環境とシロアリ"環動昆. 11(3). 125-135 (2000)
• [文献書誌] Sulaeman Yusuf,Yoshiyuki Yanase,Yutaka Sawada,Yoshihisa Fujii,Tsuyoshi Yoshimura and Yuji Imamura: "Evaluation of Termite Feeding Activities by Acoustic Emission (AE) under Various Relative Humidity (RH) Conditions"Proceedings of the Third International Wood Science Symposium. 173-178 (2000)
• [文献書誌] Yoshiyuki Yanase,Yoshihisa Fujii,Shogo Okumura,Tsuyoshi Yoshimura and Yuji Imamura: "Effect of Temperature Change on AE Generated by Termite Activity"Proceedings of the Third International Wood Science Symposium. 179 (2000)