研究概要 |
1.津軽海峡に隣接する函館湾において,2-5月に採集されたマコガレイ仔魚は,卵黄吸収中から捕食を開始し,主に有鐘繊毛虫類とワムシ類を捕食した。その後仔魚は発育に伴い主要餌生物をかいあし類ノープリウスへと転換し,大型個体ほど大型餌生物の捕食が可能であった。仔魚1個体あたりの平均捕食個体数は同じ体長グループ内でも採集年によって異なり,3月下旬以降低水温であった1999年は他の年に比べてこれらの餌の捕食個体数が少なかった。環境中におけるノープリウスの個体数密度は3月には低く4月以降増加し,年による差が小さかった。このことから仔魚の摂餌強度の低下は,環境中の餌の個体数密度よりも低水温による影響が大きいものと判断された。眼球移動中の仔魚は枝角類,眼球移動を完了した稚魚ではかいあし類ハルパクチクス目へと餌を転換し,急速な形態変化が生じる眼球移動期には,一時的に捕食活動が低下することが明らかとなった。 2.マコガレイ仔稚魚の耳石輪紋が日周輪であることを確認した。孵化後25日齢までの扁平石上の輪紋数と日齢との関係は,輪紋数=0.95×日齢-4.57(r^2=0.99)で表された。この直線の傾きは1と有意な差はみられなかったことから(P=0.054),仔魚期の扁平石上の輪紋は日周輪と判断された。また,孵化後約5日目に摂餌を開始すると,日周輪も形成され始めた。しかし,扁平石には左眼が背縁に移動した段階で,二次核成長部位が形成され始めるために,その後の輪紋の判読が困難になった。一方,稚魚の礫石上には3本の太い輪紋(チェック)が形成され,アリザリン・コンプレキソンで薬浴処理した結果,眼球移動期を示す3本目の太い輪紋以降,1日に1本の輪紋形成が確認できた。以上よりマコガレイは,仔魚期の日周輪解析には扁平石を用い,眼球移動期以降は礫石上の日周輪を用いて成長解析を行なうことが可能となった。
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