研究概要 |
前年度において,宮城県女川町指ヶ浜沿岸でバフンウニの鉛直分布を水深,底質ならびに海藻群落の帯状構造との関係で季節的に調べた。その結果,本種は浅所の小型海藻群落の岩石下で周年高密度に生息すること。そして,季節的に10月から3月にかけて,深所の無節サンゴモ群落から浅所の小型海藻群落へ移動することが明らかになった。本年度は,季節的な移動が成熟,産卵に向けて生殖巣を発達させるための索餌によるのではないか,との仮説を立て,無節サンゴモ群落と小型海藻群落のバフンウニの生殖周期と成長の季節変化を調べた。小型海藻群落において,ウニの生殖巣指数(生殖巣重量×100/体重)は,9月から10月下旬のピークに至って急激に増加して,以後4月まで低下した。この間は生殖巣が成熟し,産卵する時期に相当した。また,小型海藻群落における生殖巣指数は無節サンゴモ群落よりも周年明瞭に高く推移した。一方,年齢と殻径との関係からみた成長は,両群落間で差は認められなかった。また,成体の成長は,季節的に5月から9月にのみ認められた。以上の結果より,10月から3月にかけて認められた無節サンゴモ群落から小型海藻群落へのウニの移動は,成熟,産卵に向けての索餌移動であると結論された。
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