研究課題/領域番号 |
11660180
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川口 弘一 東京大学, 海洋研究所, 教授 (40013586)
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研究分担者 |
西川 淳 東京大学, 海洋研究所, 助手 (10282732)
西田 周平 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (70134658)
田辺 信介 愛媛大学, 農学部, 教授 (60116952)
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キーワード | 日周鉛直移動 / 人為起源物質 / 深海生態系汚染 / 有機塩素化合物 / 有機スズ化合物 / 動物プランクトン / マイクロネクトン / ハダカイワシ科魚類 |
研究概要 |
本年度は、計画書に従って深海への人為起源物質の輸送経路のうち、深海生物の日周鉛直移動を取り扱った。生物グループが中心となり、親潮・黒潮移行域において日周鉛直移動を行い、かつ生物量の多いハダカイワシ科魚類9属11種を採集同定し、各種の鉛直移動の様式を次のごとく明らかにした。1.鉛直移動種(ナガハダカ、ホクヨウハダカ、オオクチハダカ、トドハダカ、ゴコウハダカ、スイトウハダカ):全ての個体群が夜間表層に浮上し摂餌活動を行う。 2.半鉛直移動種(コヒレハダカ):個体群の一部が表層に浮上し、摂餌活動を行う。 3.受動的鉛直移動種(マメハダカ):浮上する餌を追って分布上限深度が浅くなる。 4.非浮上種(セッキハダカ、ミカドハダカ、オオメハダカ):昼夜とも同じ深度に生息、夜間摂餌のため浮上しない。 各種の有機塩素化合物および有機スズの体蓄積濃度を化学グループが分析した結果、PCBs、CHLs、ブチルスズ化合物の濃度は、駿河湾の深海魚や日本沿岸の魚介類に比べ低値であった。一方、DDTsやHCHs、HCBに関しては沿岸性の魚介類とハダカイワシの間で顕著な差が認められず、これらの物質が日本沿岸から外洋域まで均質に分布していることがわかった。ハダカイワシの鉛直移動パターンと有害物質の蓄積濃度の関係について検討したところ、PCBsやDDTs、CHLsに関してはより深層に生息するハダカイワシで高濃度の蓄積が認められたのに対し、HCHsやHCB、BTsに関しては夜間表層へ鉛直移動する種で相対的に高い濃度がみられた。ハダカイワシ種間でみられた蓄積レベルの差は、これまで報告されている外洋海水中HCHsの濃度の鉛直分布と一致しており、水柱におけるこれら有害物質の動態を反映しているものと推察された。すなわち、有機塩素化合物のなかでも比較的分子量が小さく、大気に拡散しやすいHCHsやHCBは、深層よりも表層で相対的に高い濃度分布を示すが、分子量が大きく粒子吸着性の高いPCBsやDDTs、CHLsは、深層に汚染の極大が現れるものと考えられた。一方、ブチルスズ化合物の鉛直分布は、表層への最近の流入を示しているものと推察された。
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