研究概要 |
まひ性貝毒(PSP)を産生する渦鞭毛藻Alexandrium tamarenseとA.catenellaを窒素制限下で無菌的に連続培養した.希釈率(=日分列速度)は0.05から0.175の5通りである.細胞当たり毒性はいずれの種においても希釈率の低下とともに低下し,希釈率は通常のバッチ培養 に於ける毒含量に較べA.tamarenseではおよそ1/20に,A.catenellaでは1/200に低下した.窒素制限が強くかかるほど細胞当たりのまひ性貝毒(PSP)含量が低下することが確認された。―方,窒素のセルクオータは,窒素制限が強くかかるほど明らかに上昇し連続培養における通常の結果とは明らかに異なったがこの理由は解らなかった。A.tamarenceの希釈率0.05の定常期における培養細胞を用いて窒素再供給実検を行ったところ,再供給後12日目までは細胞当たりPSP含量は変化せず,24時間以降に経時的に増加することが明らかとなった。毒性分の経時変化を逆相HPLCによって分析したところ,C2,GTX4,neoSTX は単調に増加し,GTX3は48時間後まで増加した後減少した.C1,GTXI,STXは明確な経時変化を示さなかった.また,PSPの前駆物質と考えられるguanidium化合物のうち,arginineと未同定の化合物5つが検出され,生合成の初期に誘導されると考えられるagmatineとarcaineは検出されなかった。未同定物質の中,3つの成分は経時的に増加し,未知のPSP前駆物質であることが考えられる。
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