研究概要 |
過剰な状態にある漁獲能力を適切に削減するためには,その漁法において,漁獲性能を評価するとともに,その機構としての選択性と漁具能率を分離して評価する必要がある。昨年度は,底曳網とかご漁具について,それぞれ漁獲性能を求める手法と選択性と漁具能率を求める解析手法の整備を行った。 本年度は,まずこうした漁獲効率,漁具能率,漁具性能,漁獲選択性を求める手法に関する資料を集めて,総説を作成して,印刷公表した。 また,特に日本の沿岸漁業でもっとも多用されている刺網について,重点的に選択性と漁獲性能を検討し,2報の論文をFisheries Science誌に投稿して受理された。まず,相対的な漁獲性能に含まれる漁獲選択性と漁獲効率を分けて検討するために,刺網の選択性と漁獲強度(=漁獲努力量×漁具能率)を操業実験資料から解析するための方法を開発した。これまで釣鐘型の選択性曲線を示す漁具の操業実験資料には適用できないとされてきたSELECTモデルに対して,マスターカーブ法の一種である北原の方法の考え方を導入して,多項分布を基礎に刺網選択性を求めるSELECTモデルを開発した。これによって刺網の性能を選択性と漁具能率に分けて推定することができる。 さらに,刺網の選択性は,主に網目の大きさ(目合)に大きく依存する。漁獲強度に影響を及ぼす要因として,網目以外の2次要因が刺網の選択性と漁獲性能に及ぼす影響を検討するための実験と解析手法を開発した。具体的には網糸太さを例として,目合(41,46,51 mm),網糸太さ(0.8,3,5,7号)の異なる刺網を用いてニジマスを対象に水槽実験を行った。網糸太さを変えたことによる網目目合の変化を標準化する方法として,胴周長/網目内周長に対する選択曲線を推定する方法を開発して,これを実験結果に適用することで細い網糸がより小型の魚を漁獲すること,また高い漁獲能率を維持するには適切な網糸太さがあることを明らかにした。
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