本年度の研究では、養殖ニシキゴイの新ウイルス病である「ウイルス血症随伴穴あき病」および養殖マガキの新ウイルス病である「ウイルス性外套膜緑色化症」について、養殖真珠貝の新ウイルス病である「アコヤウイルス病」で抗ウイルス効果が確認されている組み替え体ネコインターフェロン(rFeIFN-ω)を用いて、予防・治療効果を検討した。その結果、rFeIFN-ωの投与は、養殖ニシキゴイの「ウイルス血症随伴穴あき病」に対しては全く効果を示さなかった。また、rFeIFN-ωの投与は、養殖マガキの「ウイルス性外套膜緑色化症」に対してもやや効果は顕著でなかった。この研究結果に基づき、rFeIFN-ωの投与は、真珠貝およびカキのrFeIFN-ω受容体を持つ血球細胞が数的に差違があるためと推察し、抗rFeIFN-ω家兎血清を作成して、真珠貝およびカキのrFeIFN-ω受容体を持つ血球細胞について検討を行った。その結果、真珠貝では50%を越える血球細胞がrFeIFN-ω受容体を持っており、rFeIFN-ω投与により貪食能および膠原線維形成能を賦活化されるためであることが解明された。他方、マガキでは、rFeIFN-ω受容体を持つ血球細胞が非常に少なく、そのため、rFeIFN-ω投与によっても血球細胞が賦活化されることがなく、防御反応を発揮できなかったためと判断された。 本研究で、二枚貝が哺乳動物のインターフェロン受容体を持ち、ウイルス病の防御反応にインターフェロン投与が有効なことが、初めて解明された。
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