現在、養殖魚類、養殖真珠貝、養殖マガキにおいて種々のウイルス病が発生し、その被害も膨大な額に達している。本研究では、養殖ニシキゴイの新ウイルス病である「ウイルス血症随伴穴あき病」、養殖真珠貝の新ウイルス病である「アコヤウイルス病」および養殖マガキの新ウイルス病である「ウイルス性外套膜緑色化症」について、抗ウイルス効果が確認されている組み替え体ネコインターフェロン(rFeIFN-ω)を用いて、予防・治療効果を検討した。その結果、rFeIFN-ωの投与は、養殖ニシキゴイの「ウイルス血症随伴穴あき病」に対しては全く効果を示さなかったため、本研究報告書では省略した。また、rFeIFN-ωの投与は、養殖マガキの「ウイルス性外套膜緑色化症」に対してもやや効果は顕著でなかった。しかしながら、rFeIFN-ωの投与は、養殖真珠貝の「アコヤウイルス病」に対しては非常に顕著な予防・治療効果を示した。養殖真珠貝におけるrFeIFN-ω投与効果は、真珠貝の多くの血球細胞がrFeIFN-ω受容体を持ち、rFeIFN-ω投与により貪食能および膠原線維形成能を賦活化されるためであることが解明された。それに対して、マガキでは、rFeIFN-ω受容体を持つ血球細胞が非常に少なく、そのため、rFeIFN-ω投与によっても血球細胞が賦活化されることがなく、防御反応を発揮できなかったためと判断された。二枚貝が哺乳動物のインターフェロン受容体を持ち、ウイルス病の防御反応にインターフェロン投与が有効なことが、本研究で初めて解明された。また、研究成果は国際的にも注目を浴びている。
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