本研究は、アユの選抜育種を進めていく上で有効となる遺伝標識の探索を目的とし、その基盤作りとしてアユの遺伝地図の作製、つまり量的形質と遺伝標識との連鎖地図を作製することを目的とする。 本年度はホモクローンの雌個体に天然海系アユの雄個体を交配して作出した半きょうだい集団3家系のうち1家系の子魚80個体を供試魚として用い、遺伝地図作製を試みた。新たな遺伝標識としてAFLP法を用い、Eco RIプライマー8つ、Mse Iプライマー8つのそれぞれの組み合わせによる合計64のプライマーセットにおいて、その多型性・バンドの再現性等、遺伝標識としての有用性を検討した。今回用いた家系において、AFLP遺伝標識により191のマーカー遺伝子座で多型が認められ、平均多型数は1プライマーセットあたり3.0であった。AFLP法は多型性が高く、またその再現性の高さから、多くのマーカーを必要とする連鎖解析において非常に有効な遺伝標識となることが証明された。マイクロサテライトDNAの4マーカー遺伝子座(Pal-1^*〜4^*)についてはそのすべてで多型がえられた。これら計195のマーカー遺伝子座を用い、連鎖解析を行った結果、AFLPの139マーカー遺伝子座およびマイクロサテライトDNAの4マーカー遺伝子座でそれぞれ2〜10マーカー遺伝子座が組み合わさった計32連鎖群、全体で2562.1cMの連鎖がえられ、今後の量的形質遺伝子座の探索における有用性を示唆していた。 これらの家系については、本年度秋季に再び採卵し、天然海系をかけ合わせることにより次世代の子魚をえており、次年度は、これらの家系を用いてホモクローンの遺伝地図作製を行うとともに、量的形質遺伝子座の探索を試みる計画である。
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