魚類の選抜育種を効率よく進めていくためには選抜対象となる形質を見つけだし、その形質を遺伝標識に基づいて選抜していくことが望ましい。そのような選抜に優良な形質を効率よく探索するには遺伝地図の作製が重要な課題となり、そのためには簡便・効率的な遺伝標識をえる必要がある。本研究は、対象魚種としてアユを用い、遺伝地図を作製するための遺伝標識の開発と量的形質遺伝子座の探索を目的としている。遺伝標識としてマイクロサテライトDNA(7マーカー座)とともに新たな遺伝標識としてAFLP法によるマーカー座の検出を行った。AFLP法では64プライマーセットにより、191マーカー座をえることができた。1プライマーあたりの多型的なマーカー座の割合は2.98であり、多型的なマーカー座を多数必要とする連鎖解析において、AFLP法が有効な遺伝標識となることが示された。AFLP191マーカー座のうちの137マーカー座と7マイクロサテライトDNAマーカー座のうちの4マーカ座の計141マーカー座が2〜10マーカー座で連鎖し、計32連鎖群がえられた。連鎖地図の総延長は889.9cMであった。さらに、量的形質の1つとしてアユの性決定因子について探索を行い、クローンアユ×海系アユ交配群3家系について、雄の性決定因子にかかわる3家系共通のAFLPマーカー座を検出した。そのマーカー座は3家系についてそれぞれ3.8、4.2、5.2cMの距離でアユの雄の性決定因子と連鎖しており、アユ雄個体の選抜に有用なマーカーになることが示唆された。このマーカー座はいくつかの地点において採集された天然個体についても同様に雄個体において高頻度で検出され、海系アユの雄の性決定因子として共通のマーカー座であることが示唆された。
|