ノリの赤腐れ菌の感染による病斑の形成が認められない緑藻(6種)、褐藻(5種)及び紅藻(6種)の葉体からファイトアレキシン化合物の抽出法に従ってクロロホルム、メタノール及び水で抽出した画分について、赤腐れ菌の遊走子のシスト発芽或いは菌糸成長を阻止する活性の有無を検討した。しかし、現在までに試験した海藻の各抽出画分には遊走子のシスト発芽・菌糸成長を阻止する明瞭な活性は認められなかった。 赤腐れ菌の感染による病斑の形成は、主に紅藻ウシケノリ目の海藻に限られ、ウシケノリ目アマノリ属の種類によって病斑数と病斑の拡大による相違が認められた。アマノリ属のうち本病の病斑形成数が少なく、病斑の拡大が遅いカイガラアマノリを選び、カイガラアマノリの本病抵抗性の形質を養殖ノリに移入・発現できるか試験するために、カイガラアマノリと養殖スサビノリとのプロトプラスト融合を行った。種間融合細胞からの再生体を分離し、本病抵抗性と共に成長、色調、生活環などの形質を指標としてスクリーニングを行い、色調や成長はスサビノリに類似しスサビノリより本病に高い抵抗性を示す系統株2株が得られた。これら2株の葉体は、葉体上での病原菌の遊走子着生・シスト化及びシストの発芽の状況がカイガラアマノリの葉体の場合に類似していた。また、再生株の葉体から分離・精製した粘質多糖ポルフィランを分析した結果、カイガラアマノリからのポルフィランの構造に類似することが明らかになった。これらのことから、本病に部分的抵抗性を示すカイガラノリと本病に感受性が高いスサビノリとの細胞融合によって、本病に部分的抵抗性を示す養殖スサビノリ型のノリを作成することができることが明らかになった。細胞融合によって作成された部分的抵抗性の株は漁場において試験的に養殖され、得られた葉体は成長、色素、遊離アミノ酸含有量等において親のスサビノリに近似することが確認された。
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