カリコフラー蛍光染色法によって遊走子が宿主ノリ葉体に付着してから葉体に侵入するまでの過程を観察した結果、ノリ葉体表面において遊走子のシスト化-発芽-付着器形成の関係が成立した後、病原菌は葉体組織内に侵入・感染した。本病原菌は、多くの紅藻には感染するが、病斑の形成はウシケノリ目に限られること、さらに褐藻や緑藻では遊走子のシスト化が起きないことが確認された。また、アマノリ属のうち部分的抵抗性があるカイガラアマノリは抵抗性が低いスサビノリに比べ、葉体表面における遊走子のシスト化及び付着器形成の頻度が著しく低いことが確認された。紅藻ガラクタンは遊走子のシスト化及び付着器形成を促進させた。スサビノリとカイガラアマノリから抽出したポルフィラン(ガラクタン)による遊走子への影響は、カイガラアマノリのものはスサビノリのものに比べ、遊走子のシスト化及び付着器形成をかなり抑制した。両種のポルフィランはアガロースとアガロース前駆体の含有比などが相違し、遊走子のシスト化及び付着器形成にはポルフィランの構造が密接に関連することが示された。 カイガラアマノリと養殖スサビノリとの種間融合細胞からの再生体を分離し、本病抵抗性、成長、色調などの形質を指標としてスクリーニングを行い、色調や成長はスサビノリに類似しスサビノリより本病に抵抗性を示す系統株2株が得られた。これら2株の葉体では、葉体上での遊走子シスト化及び付着器形成の状況がカイガラアマノリの場合に類似した。また、再生株の葉体から分離したポルフィランはカイガラアマノリからのポルフィランの構造に類似した。これらのことから、本病に部分的抵抗性を示す養殖スサビノリ型のノリを作成することができることが明らかになった。さらに、遊走子を抗原とするモノクロナール抗体の作成に成功し、これは本病の漁場での早期検出や遊走子のレセプター分子などの研究に有用に活用される。
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