【研究目的】海産のサメ類は生体内にタンパク質の変性剤である尿素を0.3〜0.6Mと高濃度に蓄積しているにもかかわらず、生体の機能は尿素を含まない硬骨魚のそれと変わらない。これはサメ類のタンパク質が尿素に耐性をもつ構造を有するためと推測され、それらの構造特性を解析することを目的とした。 【研究実施計画】実施計画の項目に沿って以下のような成果を得た。 1.サメ類の尿素耐性についてドチザメを用いて調べたところ、このサメのミオシンのアクチン活性化Mg^<2+>-ATPase活性は尿素の影響を受けにくく、ミオシンとアクチンの親和性に違いがあることを明らかにした(kanoh et al、 1999)。 2.ドチザメのミオシン、ロッドおよびS1のαヘリックス構造に及ぼす尿素の影響をCDを用いて調べた。サメの各タンパク質標品のαヘリックス含量は尿素濃度の増大に伴って減少したが、ロッドは最も変化が小さかった。またサメの各タンパク質溶液から尿素を除去するとαヘリックスは完全に復元し、コイとの比較から、サメのαヘリックス構造は高い尿素耐性を有することが明らかにされた(投稿中)。 3.ドチザメのミオシン、ロッドおよびS1の表面疎水性に及ぼす尿素の影響を分子蛍光標識試薬で調べたところドチザメのミオシンはコイのそれより尿素抵抗性があり、S1とロッドの結合部位周辺がその差を特徴づけていることが示唆された(Kanoh et al.、 2000 in press)。 4.ドチザメ速筋からmRNAを単離し、cDNAライブラリーを構築した。次いでドチザメ・ミオシン軽鎖の一次構造を解析し、A1軽鎖は193アミノ酸残基より構成されていることが示された。またN末端側にアラニン、リジンおよびプロリンを多く含むdifference peptideが存在し、コイ・ミオシンのそれと65%の相同性を示した(平成12年度日本水産学会春季大会発表予定)。
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