研究概要 |
酸化的(活性酸素発生)ストレスを受けた魚生体中の脂質過酸化の実体を明らかにするために、HPLC法(過酸化脂質、ヒドロキシ脂質の微量定量)やGLC法(脂肪酸分析)、FAB-MS法(構造解析)等を用いて研究した。 その結果、平成11年度においては (1)健康魚の過酸化脂質(L-OOH)レベルは普通筋で50nmol/g tissue以下、血合い肉、肝臓では150nmol/g tissue位であること、2)致死的に魚(ハマチ)を運動させると、普通肉ではあまり変わらないが、血合い肉、肝臓でのL-OOHレベルが上昇するすること、(3)養殖魚(ハマチ、マダイ、アユ)は天然魚に比べ、L-OOH特にヒドロキシ脂質量(L-OH)が高いこと(4)傷病魚(ブリ、マダイ、フグ)の肝臓で顕著にL-OOH,L-OH量の増加が確認された。また、ウィルス(PRDV)感染クルマエビでは、L-OOHレベルの上昇はあったが、L-OHレベルの上昇は観察されなかった。また肝膵臓の高度不飽和脂肪酸の割合が減少し脂質酸化が確認された。 平成12年度においては ティラピア肝細胞由来の株化細胞HepaT-1及びラジカル発生剤(AAPH,H2O2)を用いてモデル実験を行った。増殖期の細胞にAAPH(20mM)を投与し培養をすると、L-OHの増加が観察された。この時、スーパーオキサイドジスムターゼおよびカタラーゼ活性は減少の傾向を示したが、GPx(グルタチオンパーオキシダーゼ)活性は著しく増加し、L-OOHからのL-OHの生成の機構が推測された。また、H2O2はカタラーゼ活性を著しく上昇させたが、GPx活性はむしろ減少し、L-OHの蓄積もおこらかった。 酸化的ストレスによって増加するL-OHピーク群の構造をFAB-MS法で分析した。分子量からヒドロキシ脂肪酸含有トリグリセリドであると推測された。詳細な構造については、引き続き検討中である。
|