研究概要 |
腫瘍細胞(HeLa及びXC)に対し高い細胞毒性を示す海洋生物由来のアルカロイドであるラメラリンDの構造と活性の関係を解明する上での最も基礎的な知見を得るために、まずはラメラリンDの構造に含まれる芳香環上の4つの酸素官能基(3位、4´位の水産基及び2位、3´位のメトキシ基)の生理活性に対する影響を調べた。具体的には、3位、4´位の水酸基および2位、3´位のメトキシ基をそれそれ除去した4種類のラメラリンD誘導体を合成し、それらのHeLa細胞に対する細胞毒性をラメラリンDのものと比較した。その結果、2-デメトキシ体、3´-デメトキシ体及び4´-デヒドロキシ体は1/4から1/7程度の減少はあるものの、ラメラリンDとほぼ同レベルの活性を示したのに対し、3-デヒドロキシ体は約1/850に活性が低下した。これにより、2位と3´位のメトキシ基及び4´位の水酸基は生理活性発現に高く関与してはいないが、3位の水酸基は活性発現に必須の置換基であることが明らかになった。 また、ラメラリンDの10位及び4´位の水酸基をメトキシ基で置換した10,11,3´,4´-テトラメトキシ体は市販試薬であるパパベリンからの誘導が可能であり合成ステップを大幅に胆略することができるので、2位と3位にラメラリンDのものと同一の置換基(2-methoxy,3-hydroxy)を持つ10,11,3´,4´-テトラメトキシ体を合成し細胞毒性を調べたが、活性は約1/200に減少した。期待していたような活性は見られなかったが、この結果により、ラメラリンDの10位の水酸基も3位の水酸基と同様、活性発現に高く関与していることが示唆された。 今後は10位の水酸基と11位のメトキシ基の生理活性に対する影響を詳しく調べるために、これらを除去した10-デヒドロキシラメラリンD及び11-デメトキシラメラリンDの合成とそれらの生理活性を検討する予定である。
|