研究概要 |
平成11年度の研究により、いわゆるフカヒレを採取した後のヨシキリザメヒレ軟骨の酸性多糖画分に固形ガンの転移、血管新生に深く関与しているMatrix metalloproteinase(MMPs)-2,9に対する阻害活性が存在することを見いだしている。本年度はこれらの阻害活性が加熱処理していない数種のサメのヒレ、または中骨の水抽出液にも存在することを見いだし、MMPs-2,9に対する阻害活性がサメ軟骨中に広く分布する事を確認した。さらに動物実験によりサメ軟骨酸性多糖画分の抗腫瘍効果を調べるため、酸性多糖画分の大量分画法を開発した。サメの水抽出物をそのまま調製用の等電点電気泳動(Autofocusing)により大量に濃縮するか(詳細は研究発表論文に記述)、3倍量のエタノールで沈殿させ動物実験に用いることのできる量のMMPs-2,9阻害活性を持つ酸性多糖画分を得た。N-ニトロソ-Bis-2-オキソプロピルアミンにより膵臓がんを発生させたハムスターに酸性多糖画分を餌料中に0.2,0.4%加えて50日間与えたところ、0.4%区において延命効果と膵臓における腫瘍の減少が有意に認められた。以上の結果より酸性多糖画分にin vitroでMMPs-2,9に対する阻害活性が認められ、さらにin vivoでも抗腫瘍活性が存在する事が明らかとなった。今後はin vivoにおける抗腫瘍活性がMMPsの阻害によるものであるか、他の機構によるものであるのかを検討して行く予定である。
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