研究概要 |
タイのエビ養殖池で大量発生し、その大量斃死を引き起こしたAlexandrium minutum株を用いて、甲殻類斃死原因物質の検討を行った。まず、同種培養株培養液にアルテミア(Artemia salina)を暴露したところ、斃死が確認されたが、アルテミアからはPSP成分は検出されず、A.minutumは摂餌されないことが推察された。次に、培養ろ液より高分子画分(>MW 10,000)を調製し、その活性を測定した結果、本画分に強い活性が認められたので、さらにゲルろ過により活性成分を部分精製した。部分精製標品の活性は加熱処理やタンパク分解酵素処理で失われることから、活性成分はタンパクを含むものと予想された。また、分子量は100kda以上あるものと考えられた。活性画分には溶血活性が認められ、活性物質は細胞毒性を有する可能性が示唆された。さらに、培養ろ液高分子画分のアルテミアに対する致死活性はA.minutumの増殖中、対数期に高く、定常期では著しく低下した。このことは本種が活性物質を分泌している可能性を強く示唆した。一方、低分子成分にも着目して検討を行った結果、培養ろ液中のある種のメタノール可溶物質もアルテミアに対する致死活性を持つことが明らかとなった。本成分の性状は検討中であるが、本種による甲殻類斃死には同成分も関与する可能性が考えられた。同様な成分の存在は他の有毒渦鞭毛藻A.catenellaでも見出され、この場合も強い溶血活性が認められるた。今後、高分子成分とこれら低分子成分の関係も検討項目とする予定である。なお、A.minutumに関してはベトナムのエビ養殖池からも培養株の作成に成功した。本株については麻ひ性貝毒の産生を確認したので、その甲殻類致死活性も検討しつつある。
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