研究概要 |
麻ひ性貝毒(PSP)原因渦鞭毛藻による魚介類斃死の機構を明らかにする目的で、まずアルテミアを指標生物として斃死におけるPSP成分の寄与を調べた。その結果、Alexandrium catenellaなどのPSP毒性は増殖適環境下では著しく低下すること、PSP毒性がほとんど認めらない場合でも斃死が起こること、さらに斃死活性はPSP毒性の低い生長の対数期に最も高い点などから、斃死の主因はPSP成分以外の成分であることが明らかになった。次に、A. tamarense, A. catenella, A. minutumの培養ろ液について斃死原因物質の検索を行った。その結果、いずれの種においても分子量1万以上および以下の両方の画分に蜷死活性が確認された。低分子物質画分について検討を加えた結果、斃死を引き起こす物質は数種類存在すること、そのうちの一部は高度不飽和脂肪酸やグリコリピドであることなどが明らかになった。これらの成分は強い溶血活性を示し、斃死は細胞毒性作用によると考えられた。一方、高分子画分の活性は熱処理やタンパク分解酵素処理で消失することから、タンパク性物質の関与が予測された。そこで、高分子画分をゲルろ過および陰イオン交換クロマトによってさらに分画し、活性成分の単離を試みた。その結果、この場合も複数の成分にアルテミア致死活性を認めた。そのうち、分子量が100Kda以上の成分は溶血活性を有していた。一方、分子量約25Kdaのタンパクにも活性を認めることが出来た。本成分は溶血活性を示さず、また本成分によるアルテミアの斃死は著しく急性であったことから、本成分は神経性の毒性を有するものと考えられた。以上、、研究の結果、Alexandriumによる甲殻類の斃死にはPSP成分の関与はほとんど無いこと、異なる活性を有する多くの成分が関わる可能性のあることなどが明らかとなった。
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