本研究では、第1に耕作放棄地を畜産農家が飼料生産基盤として活用しうる条件、及びその方法を明らかにするとともに、第2に耕作放棄地に形成される借地料、すなわち耕作限界地における純対地代(所有地代)形成の実証的研究を行なうことを目的とした。研究の結果は以下のように要約できる。 耕作放棄地を採草地として利用するためには、機械の効率的利用を可能にする農地のまとまり(団地化)や傾斜が強くないこと(15度以下)、自宅から農地までの距確が近いこと(3km以内)、圃場に入るまでの道路条件(軽トラックやトラクターが入るような道幅)が必要となる。酪農家の場合、採草利用が中心となるため、そのような条件整備が必要になるが、肉用繁殖牛農家の場合には放牧利用が適し、放牧地としての一定のまとまり(団地化)のみが必須条件となり、他の土地条件は緩和される。 耕種農家の耕作放棄地を畜産農家が借りる場合、そこには一定の借地料が形成される。一般には(全国平均)、10a当たりの借地料水準は採草放牧地が5千円、畑が9千円、田が1万6千円である。 そのような絶対地代の形成に関する研究では、現在通説となっているマルクスの絶対地代論の成立条件を中心に検討し、「農産物の生産価格を超える価値との差領」という成立条件の不必要性を論証した。ただ残る「土地所有の独占」という成立条件のみが必須条件であることを明らかにし、新しい絶対地代(所有地代)の構築を行なった。
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