研究概要 |
戦後農業技術の進歩と耕地の拡大は世界の農業生産の成長に貢献してきた。しかし80年代から人口爆発、経済成長と食糧需要構造の変化、耕地・水など自然資源の制約、環境破壊(土壌劣化、温暖化、森林破壊など)、農業政策やその他経済・政治的・社会的要因は、地球上の南と北に膨大な飢餓人口とかなりの食糧過剰摂取人口の並存の問題を持続させてきた。食糧需給の将来に関しては(1)研究代表者を含む大部分の日本の農業経済学者やL.ブラウン博士は世界の食糧不足問題は将来さらに悪化すると考え、(2)アメリカ農務省、世界銀行,MOIRAやIFPRI(国際食糧政策研究所)は21世紀初期に世界穀物需給はかなり緩むと予測し、(3)FAO(農業食糧機構)や日本農水省はこれらの中間的立場をとる。(2)と(3)の予測はすべて計量経済学的予測であり、この機械的予測が食料需給予測に硬直性と偏りをもたらしている。本研究は世界の食糧需給の単なる数値的予測ではなく、研究代表者による食糧需給の諸要因に関する内外の諸研究の経済学的評価と日本内外での聴取調査やフィールド・サーヴェイを通じた洞察を知的に統合しようとする作業である。単純な数値予測も整合性チェックのために行うが、基本的には洞察と知的統合を方法とした。研究代表者は本研究と関係の強い他の研究プロジェクトで多くの海外調査を実施しており、そこでの洞察や観察、聴取を援用した。本研究は3年間のアジアに重点をおいた研究を基礎に最終報告書を出版した。
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