本年は、当初予定にいれていなかったハンガリー調査を急遽組み入れることとなった。本研究はもともと、わが国第二次世界大戦下の農業における統制経済システムの特徴を「「集落機能に即した農事実行組合による統合」であるところに見出し、その性格を明らかにしようとするものであったが、これを「総力戦体制下の統合システムにおける日本(東アジア)型形態」として位置づけることを想定していた。ところが、西欧諸国の戦時体制においてもその統合システムは多様であり、とくにハンガリーにおいては、自らのすすむ方向を「西ヨーロッパ(資本主義)型でもなくロシア(社会主義)型」でもない、「第三の道」と位置づける運動が農村部において展開されていたことを知った。本研究では比較自体を課題にはできないが、これまで私が主張してきた西欧型と東北アジア型のシンプルな堆肥ではなく、いわばその中間的位置にあるハンガリー型コースとの類似性を意識しつつ、考え直してみたいと思っている。 また、収集した資料は内容別に、(1)政策過程…「食糧増産政策」「農業統制政策」「土地政策」「その他」、(2)実態…「技術と普及・指導」「生産」「離農統制」「職工農家」ほか、(3)部落と農事実行組合…「部落機能」「共同作業」「勤労奉仕等労力調整策」「社会施設」ほか、(4)論争・理論…「適正規模論」に分類し、要点の抜書きをすすめている。現時点でほぼ3割程度終了した。 なお、以上の取り組みを踏まえて、戦時日本農業に関する研究会を主催し、研究報告と討議を行った。
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