研究課題/領域番号 |
11660220
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
宇山 満 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助教授 (90176735)
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研究分担者 |
浦出 俊和 大阪府立大学, 農学部, 助手 (80244664)
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キーワード | 加工過程の外部化 / 需要の価格弾力性 / 国際シルク市場 / 原料調達 / 中国生糸 / イタリア / 関連産業 / 品質評価 |
研究概要 |
最大の生糸生産・輸出国である中国では、生産性重視から品質重視へと生産・管理体制が移行し、また、輸出先としてヨーロッパ市場の重要性に対して認識が高まっていることが前年度の調査から明らかとなった。原料繭・生糸の大半を輸入に依存しているわが国の蚕糸絹業の存続可能性と国際シルク市場の関係は、ヨーロッパにおけるシルク市場の動向に大きく影響を受けていると考えられ、本年度は、ヨーロッパにおける主要生産地であるフランス・リヨンおよびイタリア・コモにおいて中心的な調査を実施した。ヨーロッパにおいては、撚糸、織り、プリントといった加工過程が中心となっている。近年では、さらに加工の外部化が進められ、年々生糸の輸入量が減少する一方で、撚糸の輸入量が増加する傾向にある。ヨーロッパでは、中国生糸の品質に対して評価は高く、最新技術の移転によって、こうした加工過程の外部化を促進し、コストの低減も図っているのが現状である。特にイタリアにおいて、原料を輸入に依存しつつ絹産業が存続している背景には、加工技術の開発に加えて、新素材の開発の積み重ねも重要である。しかし、中国の生糸生産の不安定性や生糸市場に対する信用の低さから、ヨーロッパのオートクチュール業界からの絹需要は減少傾向にある。このことは逆に、中国における生産の安定性や市場の信用が確保されれば、ヨーロッパにおける需要が増大する可能性を秘めていることを示唆している。現在、中国における生糸生産は、品質重視のため、生産量は減少傾向にあるため、ヨーロッパでの需要の増大は、国際市場における生糸価格の上昇につながると推測される。こうした中、日本の絹産業がヨーロッパと同様に原料依存・加工偏重型の産業へと移行することによって存続を図るならば、より一層の生糸価格の高騰をもたらす可能性があると考えられる。
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