本年度の当初の目的ではIターンに関する全国的な動向を把握することにあったが、全国の各市町村におけるUIJターンに関する政策的な整備状況については、インターネットの普及によってデータベース化が進みつつあることもあって、いくつかの局面からIターン定住者に関する予備的調査を行うことを主眼とした。 特に本年度は林業への参入者にも注目し、岐阜県などにおいて調査を行った。一般に林業へのIターン者は森林組合の作業員というかたちで参入する場合が多いが、近年の景気後退の影響もあって、新規学卒者が一般企業や団体への就職感覚でIターンしている事例も多かった。Iターン定住者の地元との接点については、夫帰と子供のパターンだと子供の教育などを通じて交流が深まる場合が自然だが、新卒の独身者の場合はその機会がなく、Iターン者側に意欲がないと接点が少ないという例がみられた。 また農林業以外のIターンでは、都市での仕事経験を生かして地域振興開連の公社に臨時職員として採用されている場合もあった。また、田舎生活を創造するなかで積極的に都市民との交流を進めている事例もあった。そういった場合は、農林業へのIターンよりもさらに地域との交流について意識が高い。それらの人々と地元との関係について、両者が融合しながら新しい農山村社会を形作るのか、あるいは一時的にせよ棲み分け的な社会状況が作られるのか、そのあたりが、次年度以降の課題になるだろう。
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