本年度の研究活動と実績は大きく2つに分けられる。1つは、肉用牛ヘルパー制度の形態やその性格等について実態を把握し、産地発展とヘルパー制度の関わりをみることで、 東京や発展型産地(北海道、沖縄)の他、旧産地で縮小型産地(広島、山口、島根)で、資料収集と代表的な事例について行政・農協や農家等の関係者から聞き取りを行った。現段階でいえる結果は、ヘルパー制度は、大きくみると直接型(定休型と臨時型・緊急型の作業代行システム)と間接型(コントラクタ、子牛育成、糞尿処理、公共放牧場などの地域支援システム)に区分できること、発展型産地では間接型、停滞型産地(鹿児島、宮崎等)直接・間接混合型、縮小型産地では直接型のヘルパー制度にウエイトを置いた導入が比較的進み、産地活動等に刺激を与えていることが明らかになった。しかし、事例がまだ少なく、実態調査を重ねて産地発展段階差との関わりを検証していく必要がある。 2つは、ヘルパー制度の実態をより詳しく理解するために、沖縄、山口、広島、島根において、(1)受益農家の経済的・技術的メリット(飼養継続機能)、(2)ヘルパー主体となる担い手農家の役割とそのメリット(担い手育成機能)、(3)ヘルパー制度のもつ産地維持・発展機能、及び(4)行政・農協、和牛改良組合等のヘルパー制度への関わり等について第一次実態調査を行った。その結果、とくに(1)は、島根や山口の小規模農家を対象にした事例から、(2)は、沖縄(宮古)や広島等の大規模(50頭規模程度以上飼養農家、兼コントラクタのオペレータ)農家事例より一定の効果があるといえる。産地論的には両者が併存し連携する重層的システムを作りが課題となろう。
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