本年度の研究活動は3つである。1つは、ヘルパー制度や肉用牛飼養地域支援制度(以下、支援制度、主体は行政・JA、大字・集落、生産者組織等)に取組んでいる地域(長崎県壱岐島、鹿児島県菱刈町、岐早県朝日村他)をとりあげ、(1)ヘルパー制度受益農家の経済的・技術的メリット。(2)担い手農家の役割と彼らのメリット。(3)ヘルパー制度の普及・定着に伴う産地における飼養技術の統一・平準化効果等の実態調査である。これまでの調査・考察から、壱岐島は生産者組織主導型、朝日村は行政・JA(和牛改良組合)主導型、菱刈町はその中間型と区分でき、現在、各形態毎に(1)〜(3)の成果と課題について分析している。 2つは、優良牛生産地域である兵庫県但馬地方で飼養農家とヘルパー制度や支援制度についての実態調査である。優良牛生産地域(含中国中山間地域)農家では、飼養主体の高齢化のほかに(1)規模の零細性、(2)コスト高、(3)技術の不均質生等の経営的特質をもち、それが産地の基本的課題となり、ヘルパー制度や支援制度の整備が強く求められている。これまでの考察から、その方向として、地域農業や資源との結びつきの強い生産者組織を中心に、それを行政・JA型が支援する体制が有効と見られる。とくに、水田の飼料生産や放牧利用を推進し、地域農業と並行した肉用牛振興(生産者主導型ないし中間型)が重要となる。 3つは、先駆的取り組みとして各地に見られるヘルパー制度や支援制度の整理・体系化である。この制度は各地で多様な展開を見せており、現在(1)概念の整理、(2)受益農家や担い手農家のメリット、(3)産地の維持・発展機能、(4)制度導入・普及・定着と行政・JA、生産者組織等の関わり等について実証的に考察している。
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