本研究の目的は広域合併農協の営農指導・販売事業に関わるマーケティング効率を明らかにし、営農指導販売事業の現状とその存在理由を解明するとともに、今後の組織再編の方向を検討することにあった。 本研究では熊本県内の農協を対象に、営農指導・販売事業のマーケティング効率をDEA法を用いて計測した。その結果、県内の広域合併農協は合併後、マーケティング効率を上昇させている農協とそうでない農協に分かれることが明らかになった。それらの農協の中から、マーケティング効率の上昇している農協としてJA鹿本を、マーケティング効率が停滞している農協としてJA菊池地域を選択し、その要因を定性分析により検討した。 分析の結果、マーケティング効率を上昇させているJA鹿本は各作物毎の部会の合併および営農指導・販売事業のセンター化を推進させており、JA菊池地域ではそれが不完全な状態であることがわかった。また、そのようなセンター指導・販売体制への移行は農協が組合員に対して十分な誘因を提供できなければその達成が困難であることが明らかになった。 またこれらの分析を踏まえ、同じく熊本県内のJA熊本のみかん産地を対象に糖酸度センサーの導入が産地統合に及ぼす影響を検討した。 分析の結果、糖酸度センサーの導入は、生産体制、集出荷の異なる産地が統合する場合に発生するコンフリクトを軽減させ、価格上昇効果、農家の最終生産物評価納得効果、集出荷費用低減効果、営農指導・販売担当職員削減効果、組合員新規参入効果等様々な波及効果が存在することが確認できた。
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