酪農においては高齢化、後継者不足のため農家数の急減が見られる。酪農は他の部門に比べ多額の施設投資を行っており、これらの資産保持のためリース農場が有効な手段となる。そこで本研究では全国的なリース農場の実態調査を行い、リース農場活用による酪農部門への新規参入者の受入、定着状況の分析を行った。結果の概要は、(1)リース農場を活用した新規入植者は北海道が圧倒的に多く、都府県では岡山県で見られた。(2)北海道では農業開発公社が実施する農場リース事業による短期リース型(5年間リース後売却)と士幌町農協が行っている農協単独の永久リース型が主である。この他、農協独自のリース事業がいくつかみられた。(3)農場リース事業を活用した新規入植者の定着率は極めて高く、北海道全体では9割を越えていた。高い定着率の要因は、入植地域での研修、実習の経験、関係自治体のリース料、固定資産税減免等の手厚い支援、農協、普及センターの技術支援、地区農家群の支援等である。(4)士幌町農協が行っているリース農場は、土地、建物はすべて農協が所有するものの、新規入植者の希望によって施設、建物の新築は可能であるが、その分リース料に上積みになる。後継者はそのまま継続できるものの、後継者が不在の場合は資産の帰属は農協になる。(5)岡山県ホクラク農協が行うリース農場は農協が離農者と新規入植者の間に入り、農地借地契約の仲介と建物施設については農協が投資しリースする斡旋型の永久リース型である。(6)以上のリース農場制度は新規入植者にとって受入、定着の有効な手段であるものの、事業量が少ないこと、様々な制約があることから、今後、新たな農協独自の運営によるリース農場の設立により急増する離農農場の受け皿になることが予想できた。
|