発展途上国の農業・農村開発のガイドライン作成のために、本研究は二つのコンポーネントからなる。(1)発展途上国の農業政策の課題と農村の実態把握、(2)我が国の農業委員会制度の経験を相対化することである。本年度では次の点を明確にすることができた。 (1)2000年4月に中国内陸部の農村、2000年11月及び2001年1月にラオスの農村を見学した。中国、ラオスとも一党独裁下の社会主義体制内で、市場経済を推進しているという点で共通している。農業・農村開発の重要性に対する認識から、村長は強力な権限を行使し、農村部で農業・農村政策を遂行する核となっている。一方、市場経済メカニズムと持続可能な開発を一層推進していくためには、党権力を背景として統制的に機能する村長権限を分権化し、地区住民の参加を促さなければならない。 1943年国家統制の必要上導入された我が国の「農業会」と戦後の再編過程をこうした観点から整理する重要性を認識した。農業委員会制度成立過程における議論を文献に基づいて整理することが次年度の課題として残された。 (2)前橋近郊の粕川村での調査を継続した。同村は、基盤整備事業と同時に集落単位の機械利用組合を組織し、ダイズ、小麦、米のブロック・ローテーション体系による高い農業生産力を実現させた。集落の組織化において農業委員会の果たした役割は大きかった。しかし、オペレーターの高齢化等から、新しい農業組織への再編成が緊急の課題となっている。新農業基本法下で、生産と生活に関わる農村地域全体が農政の対象となった。このため農業委員会は従来とは異なった課題に応えなければならない。農業委員会と農協や生産者組織、地区の女性グループ、環境・文化活動に関わるグループ等との連携のあり方を含め、農業員会の再編という課題が明確化された。
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