南アジアに位置する発展途上国、インド、バングラデシュ、ネパール、ブータンにおける農村開発の課題は、地方行政機構と集落組織及び農業団体等の相互連携を強化し、農政が浸透する受け皿の形成である。上記対象4か国の事例から以下の諸点が確認された。(1)地方自治の適切な単位を設定し、諸省庁のサービスを束ねる調整機能を持つ地区(村落)開発委員会制度の導入・設置が促進されている。(2)世銀、アジア開発銀行、UNDP(国連開発計画)等は、貧困撲滅を上位目標に揚げ、地方分権、参加型開発、持続性、よい統治等を達成するために、(1)の動向を推進・強化している。(3)フィールドを受け持つスタッフは集落組織、コミニィティとの連携を通して推進している。 この問題を考察する上で日本の経験は示唆に富む。第一は、中央省庁と地方自治体とによる共同事業で進められた農業改良普及(生活改善)事業である。第二は、1951年に創設された農業委員会制度である。戦後の農地改革等業務を引き継ぎ、かつ農業・農民の代表機関としての機能を併せ持つ市町村の行政委員会として設置された。食糧自給を達成し、工業化に貢献した日本農業の発展には、町村以下の段階で農政の一層の新党を可能にした農業委員会の存在があった。農業委員会は、特に行政組織、農業協同組合に代表される農業団体等と集落組織を有機的に連携させる機構構築において大きな役割を果たした。 本研究は、援助協力という観点から日本の経験を整理し、発展途上国の制度改革に有益な視点を探るためのものである。ただ当初計画していた2程度の農業委員会の過去の事例を記述することは課題として残った。
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