研究概要 |
1. 岩手県下農協米穀部より提供された、平成4年および平成5年度の月別地域別(農協別)米小売パネルデー夕の分析から、平成5年度の米不足パニック主要因としての飯米農家の米需要行動(食糧事務所のいう「農家特需」)を明らかにした。 2. 4戸の日誌を整理し、作況指数悪化と生産者のミクロ的経営・意識過程の関連を明らかにした。 3. 岩手県稲作農業認定者4,200戸に対する平成5年大冷害に関する意識アンケート調査を実施し、42%の高回収率結果を得た。膨大な情報量であるため現在データベース化が終了した段階であり、全体的分析はこれからであるが断片的集計データをみる限り、冷害常習地帯の比較的小規模経営農家の自家飯米不足をトリガーとするパニック行動が明らかである。 4. 岩手県と青森県の飯米農家パニック発生過程の観察によって、米穀卸売業・小売店構造、地域作況指数、農業生産構造、風土的特性(特に冷害常襲性)、情報提供のあり方、等を「パニック誘導変数」とするパニック関数的分析の可能性に対する展望を得ることができた。 5. 調査過程で判明した、岩手県の大冷害による翌年用種子不足を補うための、岩手県と沖縄県石垣市農協との種子緊急増殖契約事業は、フードシステム損傷を補償する重要なアイデア実現である。 6. 日本最南端地域の石垣市や竹富町(島)では米パニックは発生しなかったが、「地域自給率」、米消費構造(文化)などの地域特性の影響が現地調査で判明した。この方面の一層の研究が必要である。
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