研究概要 |
本研究は,乾燥地や半乾燥地地域で治水,あるいは水資源確保の目的で建設される透水型ロックフィルダムを対象に,その水理学的・力学的設計法を開発することを目的とする.第1年度(平成11年度)でロックフィルを通る流れの水頭損質特性を,第2年度(平成12年度)でロックフィル構造物の通水性能の予測方法と水理学的設計手法を検討した.研究成果を以下に要約する. まず,河川礫を用いた一次元透水試験により,動水こう配と流速の非線形な関係をForchheimer式により表した.これによりえられた水頭損失式では,水温の影響を,水の動粘性係数を介して適切に考慮することができる.また,水頭損失式を記述する非線形係数を間隙の水理学的平均径の関数としてモデル化した.これにより,ロック材の材料特性と構造物の間隙条件から決定される水理学的平均径を唯一のパラメータとして,ロックフィル構造物の水頭損失特性を調べることが可能となった.ここで求めた水頭損失式の妥当性を,室内水路模型実験ならびにFEMにもとづく数値計算により確認した.構造物を通過する流量,堤体内における流れの状況のいずれも,一次元透水試験によって求めた水頭損失式により良好に推定することができた.小型の模型から実規模大までの規模の異なる透水型ロックフィル堤体を対象に,水位流量曲線の特徴を調べた.堤体を通過する流量が水位とともに累乗的に増大すること,またこの水位流量関係に対し水温の影響はまったくなく,これを水理学的な設計因子として考慮する必要がないことを示した.これらの水位流量曲線に対し,有効動水こう配を導入することにより,堤体の規模に依存しない統一的な水位流量曲線をえることができた.これにより,堤体の規模や形状を取り込んだ簡易な水理学的設計法の構築が可能であることを明らかにした.
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