本研究は、不飽和層内の汚染物質の移動を解明するために、様々な土を使ってトレーサー試験を行ったものである。特に、土中の溶質移動が一様ではなく、滞留があるという概念を導入し、滞留がどのように溶質移動に関与するかを検討したものである。 結果として、不飽和土壌中の溶質の移動に関し、滞留域が存在することを明らかにしたうえで、可動部と滞留部の比を飽和状態と不飽和状態について推定し、飽和状態では可動部の割合はほぼ10^*のオーダーであるが、不飽和状態では10^*から10^*のオーダーに広く分布していたことを示した。また、不飽和土壌中の溶質移動が、解析解による数値シミュレーションで評価され、おおむね高い適合度であったことから、滞留域の存在という物理的背景をもった4パラメターモデルにより、不飽和土壌中の溶質移動をシミュレーションできることがわかった。さらに、非均一性の考慮が必要であることが示された。本件研究では数cm〜数十cmのスケールの室内実験が行われたものであるが、このスケールでも非均一性が存在することが示されていた。攪乱状態よりは不攪乱状態で、飽和よりは不飽和状態で、非均一性が卓越することが示されている。 結論は以下の通り。 1.不飽和浸透層内の汚染物質移動の評価のためには滞留が存在することを考慮すべきである。2.本研究で用いられた、滞留を考慮した移流分散方程式は不飽和浸透層内の汚染物質の移動の定量的評価に効果的である。3.室内実験スケールでも非均一性が認められたことから、将来、滞留効果に加え、非均一性を考慮したモデルが必要である。
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