研究概要 |
平成9年鹿児島県北西部地震は,各種の構造物に被害をもたらし,干拓堤防においても,液状化による被害が発生した.被災した干拓堤防は,耐震設計に基づき,液状化の対策工が実施された.本年度は,この干拓堤防をケーススタディとして取り上げ,液状化対策工法の効果を検討した. 解析手法は,昨年度と同様,任意方向のせん断面において適用可能な双曲線モデルを用いた非線形動的有効応力解析手法である.解析は,被災状況を再現したケース,液状化対策を考慮したケースのほかに,対策工の効果を知るために入力加速度レベルを変更したケースを実施した.液状化対策を考慮した解析によると,被災状況を再現したケースと比較して加速度の応答に大きな違いは見られなかったが,過剰間隙水圧比では対策工直近の位置で最大値が0.9以上から0.6以下に低下し,対策工が適切であることが明かになった.また,地震時の応力経路は初期の応力状態に強く依存し,盛土による初期応力(有効土被り圧および初期せん断応力)の増加により液状化の発生が抑制されることが明かになった.さらに,地震危険度解析によって求めた100年確率加速度225galを入力地震波とした解析でも液状化の発生が抑制され,実施された液状化対策工の有効性を検証するこどができた. また,平成12年10月鳥取県西部地震により液状化被害が発生した中海干拓堤防の調査を行った.中海干拓堤防は出水干拓堤防と型式や基礎地盤が違い,本被災データは貴重な情報となる.今後は,中海干拓堤防をケーススタディとした解析を行うとともに,各堤防型式毎に大別できる液状化対策工法を検討していく.
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