研究概要 |
本研究では,魚類にとって良好な生息環境とはどのようなものかを農業用の用排水路を対象に水理学的側面から検討し,水理環境に対する魚群の応答行動の評価モデルを構築することを最終目標とする.今年度は,その研究の第一歩として,まず静水中の魚群行動の数理モデルを構築するため,水槽実験と数値実験を行った. 水槽実験には,100cm四方,水深5cmの水槽を使用し,実験魚にはヒメダカを用いた.水槽内でヒメダカを自由に遊泳させ,その様子を上方からビデオ撮影し,得られたビデオ画像を画像処理することで,魚群中の全個体の遊泳軌跡を得た.この軌跡から,個体の特徴パラメータとして,遊泳速度,Nearest Neighbor Distance (NND),魚群の結合性のパラメータとして拡がり度,魚群の並行定位性のパラメータとして偏向度を得た. 以上の水槽実験で得られた知見を基に,群行動の数理モデルを構築した.モデル化には行動パターンモデルを使用した.同モデルでは,個体の周りを,誘引領域,並行定位領域,反発領域,探索領域にゾーニングし,個体間の相互作用とそれに伴う行動パターンを,このゾーニングによって決定した.すなわち,誘引領域ではお互いの方向に,並行定位領域では同じ方向,また反発領域では衝突を回避する方向へ,探索領域ではランダムな方向へそれぞれ遊泳するとした.この行動パターンモデルの各領域の境界は水槽実験結果から決定した.以上のモデルを用いて,数値実験を行った結果,水槽実験で得られた遊泳速度,NND,拡がり度,偏向度を再現できた. 以上から,散水中の魚群行動はモデルで再現できると考える.次年度は,静水中のモデルを改良すると共に,流れの場での魚群行動のモデリングを行っていきたい.
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