研究概要 |
南西諸島の島々にはさんご礁で生成された石灰質生物群からなる石灰質土およびこれと類似した古い地質時代のさんご礁堆積物を起源とする琉球石灰岩層が分布している。これらの石灰質堆積物は,固結層と砂礫層が混在する複雑な地盤を形成し,砂礫層は粒子破砕を生じ易く,杭の支持層としては問題の多い地盤とされている。本研究では,石灰質のシルト層,砂礫層および琉球石灰岩層中の砂礫層について力学挙動を明らかにするとともに支持層としての利用の観点から鋼杭との摩擦特性について検討した。主な研究成果は次のとおりである。 1.堆積物の炭酸カルシウム含有量は,土の強熱減量試験を適用し540-700℃の間の減量から求める手法により測定した。粘土分,シルト分の卓越する層厚16mに及ぶ沖積層においても炭酸カルシウム含有量は90%以上であり,これらの細粒分は陸源の堆積物ではなくさんご礁から供給された堆積物であることが明らかにされた.また,炭酸カルシウム含有量の変動から堆積過程が推定可能である。 2.沖積層の堆積物の多くは粒度特性から粘性土に分類されるが,圧縮性は炭酸カルシウム含有量の増加に伴って減少し,またせん断特性はむしろ砂質土としての挙動が卓越する。 3.沖積層における砂礫堆積物および琉球石灰岩層中の砂礫層では粒子破砕による圧縮性と強度低下がみられ,セメンテーション効果による力学挙動の改善が必要である。 4.一面せん断試験による鋼材との摩擦試験によると摩擦角は石灰質シルトで25〜27°,石灰質砂で29〜31°,琉球石灰岩層中の砂で33〜35°を示している。しかしながら,周面摩擦力は地盤の剛性によって動員程度が異なり,セメンテーションの発達した層ではせん断に伴う土の体積減少が周面摩擦力の低下の原因になる。
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