研究概要 |
我が国の馬鈴薯生産は400万トンで,その内70%が北海道で生産されている。近年,食生活の洋風化に伴って加工用馬鈴薯の消費が増大し,馬鈴薯の皮下黒変の低減が加工現場で急務となっている。皮下黒変は収穫から貯蔵までの様々な外力によって皮下部が損傷を受け,チロシン,クロロゲン酸等のフェノール類が,ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)により酸化され,2〜3日後に黒色のメラニンとして発現する,と考えられているが,その発生機構は明らかでない。本年度は,塊茎内ガスの測定を中心に行った。試料として,皮下黒変抵抗性品種のホッカイコガネ,中間品種のトヨシロ,とおやおよび感受性の農林1号を用いた。その結果,農林1号および"とおや"は,CO_2およびN_2濃度がトヨシロ,ホッカイコガネに比べて高く,逆にO_2濃度が低かった。このことから,皮下黒変になり易い塊茎は,呼吸が盛んに行われているものと推測された。塊茎ガス量(ml/100g塊茎)と損傷部の破壊荷重との間には負の相関関係がみられ,ガス量の小さい品種ほど硬く,皮下黒変になりづらいことが明らかとなった。これらのことから,馬鈴薯の皮下黒変を抑えるには,呼吸を抑えた状態(例えば,10℃以上)に馬鈴薯をもっていく必要性があることが分かった。
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