研究概要 |
本年度は最終年度になるために,1) 圃場における台車の走行実験,2) 画像処理法の改良による畦畔の認識精度の向上,3) 制御則の改良・検討について実施した。以下,これらの検討事項についてまとめる。 台車の水田畦畔上での自律走行実験は,岩手大学附属滝沢農場の水田畦畔にて実施した。台車のクローラ端間の幅が85cmでやや大きいため,天端が約1.2mで,比較的丸みの少ない畦畔を供試した。その結果,ビームセンサが畦畔端を検出する事自体には問題がないことが分かったが,一部畦畔に雑草のない状態でもビームセンサが畦畔端を検出ミスし,実際とは異なった横偏差を示すことも見られ,今後ソフトウエア上でこのような場合を回避する必要を認めた。また,今回の5m程度の試験走行では,初期偏差が多少あっても3m程度姿勢制御を繰り返すうちに基準線に追従するようになった。今後,水稲の各種生育ステジにおいて,検出状態の精度を確認する必要があること,畦畔からの脱落防止のため,接触型のセンサなどのセンシングデバイスの開発についても示唆された。諸般の事情により,残念ながら台車の前部に雑草刈取用のモーアを取り付けられたのが非常に遅れてしまい,12月頃になってしまった。従って,実際の雑草の刈取りは今後実施して,不具合の検討をしていく予定である。 画像処理による畦畔の認識法の開発では,昨年度からのHSI変換法に代わって,Hough変換法を用いて検出精度の検討を行ってみた。この結果,直線畦畔ではカメラでは雑草が検出されていても,比較的良好に畦畔線が検出できることが分かった。これは,HSI変換法では色相と明度により畦畔を抽出したため,緑色の部分が全て検出されてしまい,結果的に雑草も一緒に検出されることにより,雑草に影響されて回帰線がずれてしまうことになってしまったことによるものである。一方,Hough変換では,雑草部分が2値画像に存在しても直線に並ぶ点を基にして畦畔線を検出するので,雑草等による不規則な形状があっても,影響されることが少なかった。 制御則の検討では,旋回時には前方注視点モデルに類似した制御法を用い,これに直線走行を組み合わせて制御する方法をとったが,シミュレーションの結果,旋回量を決めるパラメータkは,-1.75が最適で,直進量Dは,0.6m以内に収めないとオーバーシュートが大きくなり,実車走行時に悪影響を及ぼす可能性のあることが示唆された。
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