研究概要 |
水国畦畔の除草作業は,水田作業のほとんどが乗用化された現代にあって,唯一残された過酷な作業となっている。本研究ではこの水田畦畔除草作業の労力負担軽減のために,除草作業ロボットの開発を行った。 本研究の成果の概要は以下の3つにまとめられる。 1)除草ロボット用台車の開発:農用運搬車を改造し,左右の操行クラッチを油圧シリンダで断続できるようにした。畦畔のセンシングは赤外線ビームスイッチを6個横方向に並べて,上下方向の位置を検出できるようにした。また,台車の姿勢角は光ファイバージャイロを用いて検出した。これらのセンサーからのデータは台車上のコンピュータに取り込み,2)に示す制御則に基づいて操行クラッチを制御し旋回と直進動作を行うことが出来るようにした。また,モーアを台車前部に装着し,除草できるようにした。 2)除草ロボットの直進制御則の開発:狭い水田畦畔上で台車の直進を制御するために,台車の前方に注視点を定め,この点と目標となる畦畔中心線との横偏差に比例した分だけ台車を旋回させる方法を提案した。旋回後は直進と旋回を繰り返しながら徐々に目標線に収束させるようにした。シミュレーションにより,旋回量及び直進量を表す係数の最適化を図り,この値を用いて実車実験を行った結果,両者は精度よく一致し,本制御モデルの妥当性が示された。 3)画像処理による畦畔の認識法の開発:処理の流れは,ディジタルカメラによる画像の取得,量子化,移動平均法によるフィルタリング,HSI変換による2値化,2値化画像からの畦畔線の検出である。HSI変換では色相として緑色を抽出し,これに明度条件を加味して2値化を行った。畦畔線の検出では,2値化画像からエッジ点を検出し最小二乗法またはHough変換を用いて検出を試みたが,近視野に雑草が多く畦畔線が複雑な場合でも,中・遠視野には比較的直線的なエッジ点があることが多く,このような場合はHough変換を用いた法が適切に畦畔線を求めることができた。なお,8月以降の画像では水稲と畦畔の間の陰の部分を検出することにより,畦畔線の検出が容易になることが分かった。 また,GPSによる位置検出について検討した結果,防風林等の高い木がなければ精度よく位置検出が出来ることが分かった。実際の畦畔除草は,実験装置の調整に手聞取り実施できず,今後継続して改良を重ねることとした。
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