研究概要 |
植物体の温度勾配を計算するために、植物の一部(たとえば茎頂部など)の温度を環境条件から予測するためのモデルを開発した。 このモデルはPenman-Monteithモデルを応用したもので、生育環境の物理的要因、つまり短波長放射量、長波長放射量、乾球温度、湿球温度、風速の5つの要因から植物温度を予測するものである。Penman-Monteithモデルにテーラー展開など近似計算を適用し、植物体温度を独立したパラメータにし、コンピュータによる数値計算で植物体温度を求めた。 検証のための実験は、営利栽培用温室でポインセチアを用いて上記の5点のほか、植物体の対象部位(今回の実験では茎頂部)の温度を極細の熱電対(Omega Co.,Ltd.14guage fine thermocouple)で実測した。測定データは、マルチプレクサー(Campbell Scientific,AIM417)を介してデータロガー(Campbell Scientific,CR10)に取り込んだ。データ取り込みのインターバルは10秒毎のデータを10分間平均したものである。 モデルの予測値と実測値の差は夜間では0.1℃以内、昼間は最大でも1℃程度であり、構築したモデルによって植物体温度が非常に精度よく予測できることが確認された。モデル予測値と実測値の差が大きく発生するのは短波長放射量が大きくなったときであり、これは植物体の短波長吸収率を文献から引用した値をそのまま用いたことや短波長について形態係数を考慮していないことなどが原因と考えられる。
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