本研究では、労働強度の評価指標として作業後の重心動揺に着眼し、試作した重心動揺計測器により、ルームランナー、エルゴメータによる作業負荷試験において作業強度と重心動揺量の計測、解析を行った。得られた結果は以下の通りである。 1.覚刺激として、重心誘導回転盤を追視しながら重心動揺測定をした結果、立位安静(両足直立)では誘導無しに比べて重心平均移動量増加率で10.8%、平均重心点距離増加率で2.6%の増加が見られた。また、片足立位安静では誘導無しの場合、重心平均移動量増加率91.6%、平均重心点距離増加率11.5%を示したが、誘導有りでは、重心平均移動量増加率248.4%、平均重心点距離増加率77.2%と大きな増加を示し、重心動揺計測解析による疲労度推定が可能である事が明らかになった。 2.重心動揺測定において、重心誘導回転盤を使用しない場合、15kcal/min以下のエネルギー負荷では重心動揺と作業負荷の間に相関が小さく、疲労度の推測は難しいことが明らかになった。重心誘導回転盤を使用した場合、重心平均移動量は負荷の増加に比例して増加し、作業後に視覚刺激を与えると、それに反応して負荷の大きさに合った重心動揺がおきた。重心誘導回転盤を用いての重心動揺測定は、今後さらに実験データを構築していくことによって、労働強度を評価する手段として有効であると考えられる。 3.作業負荷とRPE、心拍増加率は強い相関を示した。しかし、個人差も見られ、日常的に運動をしている被験者と、運動をしていない被験者の運動能力や心肺機能の差が原因と思われた。しかし、特定の負荷作業において、作業強度を推定する手段としてRPEや心拍増加率は有効であった。
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