研究概要 |
環境への影響を考慮した減農薬さらには有機栽培の普及のためには,薬剤を使用しない雑草防除法の開発は急務の課題であると考えられる。本研究では,古紙を水と混合したスラリー状(液状再生紙)とし,ほ場表面に塗布することにより雑草の発生を抑制するシステムを開発することを目的として行い、以下のような成果を得た。 1.作物種子を利用した出芽抑制実験 材料の分解程度および単位面積当たりの塗布量が雑草の抑制効果に与える影響について明らかにするため、雑草種子にみたてた作物を育苗箱に播種・覆土し、その表面に液状再生紙を塗布して出芽実験を行ったところ、分解程度と塗布量の組合せで考えると,微粒では500g/m^2,細粒では250g/m^2以上,粗粒では500g/m^2で5%以下の出芽率となった。また、出芽抑制効果を得るためには,せんい長さもある程度保たれていて,せんい同士がからみやすい状態に分解すること,また,乾燥後厚さが均一になるよう塗布する必要があると判断された。 2.ほ場実験における雑草抑制効果実験 甘藷ほ場および作物を植え付けていないほ場において塗布実験を行ったところ、液状再生紙塗布区では、地温抑制効果があった。雑草抑制については、塗布量の少ない125g/m^2であっても80日間程度であれば効果があることが示され、250g/m^2以上であれば4ヵ月程度は抑制効果が持続することが示された。 3.画像処理による作物と雑草の識別アルゴリズムの構築 マシンビジョンによって作物を雑草と識別し、液状再生紙の塗布自動化のための基礎なるシステムの構築を試み、Windows980S内部に含まれるAPI(Application Program Interface)関数を用いることによって,Visual Basic環境下における農作物の形状判定システムを開発した。本判定プログラムはWindows対応のビデオキャプチャデバイスを有するコンピュータで利用でき,汎用性の高いものである。また、画像処理による特徴抽出の結果得られた形状に関する6つのパラメータ,すなわち,面積,フィレ比,複雑度および大きさ(3点)を入力値として,ニューラルネットワークモデルによる等級判定を行った結果,高い正解率を得た。 以上、本研究により得られた成果を総括したが、液状化再生紙は期待される雑草抑制期間や天候条件を考慮して、適当な塗布量を選択して施用することにより、有用な雑草防除資材として利用可能であることが明らかとなった。
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